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PCR検査の話①

令和211月、体操の内村航平選手が新型コロナウイルス感染症のPCR検査で陽性となり、「(開催される)国際大会に参加できない⁉」と危惧されました。その後検査を繰り返した結果、偽陽性が判明し無事大会に参加。この経緯を記憶している方は多いかもしれません。

新型コロナウイルス感染症が私たちを覆うようになってすでに2年近くが経過しました。この間、「検査を広く行え」という議論が行われ、検査数も最初のころに比べて多くなってきたようです。更に自費で自由に検査を受けることも可能となってきています。しかし検査の結果をどう考えるべきなのでしょうか? 

ある時点で対象となる人たちを分類すると「感染している人」と「感染していない人」に分けられます。しかし誰がどちらかはまだわかりません。そこで検査。この検査で「感染している人」を正しく陽性と判定する割合を「感度」といい、「感染していない人」を正しく陰性と判定する割合を「特異度」といいます。現在の水準では、感度70%から80%程度、特異度99.9%程度といわれています[1]

[1] 忽那賢志(2021)『専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話』219頁で感度は70%程度。令和3610日日本経済新聞 経済教室「認知のバイアス、政策に生かせ、コロナに経済学の知見」(依田高典 京都大学教授)では感度80%。

(以上の検査の概念図を最後尾に示しました)

PCR検査の結果、陽性となった人達には「感染していて陽性」と「感染していないが陽性(偽陽性)」両者が存在しています。すると陽性判明した人のうち本当の感染者はどの程度かが問題となってきます。この割合を陽性的中率といいます。陽性的中率は「感染していて陽性の人の数」を「感染していないが陽性の人の数」と「感染していて陽性の人の数」の合計で割った値です。

感染率0.1%の集団を想定してみましょう。かりにこの人たちが1万人いると感染者は10人(つまり0.1%)です。ところが検査をすると陽性判定される人は8人(感度80%)。逆に感染していない人は9990人。このうち陽性判定される人(偽陽性)は9.99人(9990人×(1-0.999)。この結果、陽性的中率は8人÷(8人+9.9人)=0.4447。 44.47%です。感染率0.1%程度の人を大量に検査すると、半数以上は偽陽性ということになるようです。さて感染率が「低そう」とか「高そう」とかいうのはどういうことでしょうか?また、実際に検査を受けた場合の結果について私たちはどのように考える傾向をもっているのでしょうか。次回検討してみようと思います。

参考文献等
〇陽性的中率については                                                                           ゲルト・キーゲレンツァー(2010)『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法』(ハヤカワ文庫)

〇新型コロナウイルス感染症に関する専門医からの説明としては 忽那賢志(2021)『専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話』

 

                                        (小山浩一)

図表1 検査の概念図