情報・コラム

コロナ禍で生命保険業界はどう変わってきたか②

小山 浩一

前回は保有契約に係る年換算保険料をベースに市場シェアを見てみました。当年度末の保有契約は、年度始の保有契約に当年の新契約が加算され、当年の消滅契約(満期や死亡保険金支払いによる消滅等)や解約・失効契約が減算されたものです。したがって保有契約はこれまでの歴史を引きずっているので、当年の動きが比較的遅れて現れると考えられます。これに対して新契約はその年の動きそのものなので、(特定の側面ではあるものの)当年の業界の動きがそのまま表れる性格を持っているといえます。

 そこで(保有契約でなく)新契約に係る年換算保険料をベースに前回と同様の市場シェアを見てみました。時期は前回同様、183月末(2017年度)から213月末(2020年度)までの動きを対象としています。

 まず新契約(転換を含む)に係る年換算保険料は、18年度29869億円から19年度1兆9385億円に急減。20年度には15944億円まで下がっています。

上位1位社の市場シェアは、2018年度(193月末)11.77%まで下がっていましたが、その後反転、2020年度(213月末)13.17%を占めるに至っています。この上位1位社の市場シェアはそれ自体が伸びたというより、全体が減少したことによる影響がありそうです。

上位3社累積集中度を見ると、2017年度(183月末)33.66%から2020年度(213月末)25%まで減少しています。寡占状況を示すHHI(ハーフィンダール指数)も同様に2017年度(18年3月末)0.06145から2020年度(21年3月末)0.04938まで低下しています。

 以上のことから新契約年換算保険料をベースに見ると全体規模の縮小、(上位1社のシェアが伸びているように見えるものの)上位3社の累積集中度は低下、より競争の激しい方向へ変化しているようです。

この傾向は前回、保有契約で見た場合でも同様でしたが、新契約の側面だけでみると数値的により鮮明にこの傾向が表れているようです。

なおここで記載した指標数値等を以下にまとめておきました(数値は生命保険協会事業概況(データCD-ROM)から筆者計算)。

新契約年換算保険料ベース市場シェア等

18年3末 19年3末 20年3末 21年3末
上位1位社シェア  14.21% 11.77% 12.92% 13.17%
上位3社累積集中度 33.66% 29.10% 26.70% 25.00%
ハーフィンダール指数 0.06145 0.05326 0.05292 0.04938
新契約年換算保険料 2兆6501億2200万円 2兆9869億800万円 1兆9385億9500万円 1兆5944億8500万円