資産とリスク研究所 小山 浩一
生命保険業界全体の状況について話題になることは最近あまりないように思います。取り上げられるのはかなり断片的な話で、「コロナ保険が売れすぎ、またオミクロン株の影響で感染率が高くなって保険料を上げるか、販売停止になる」とかそういう類です。
こういう情報では、生命保険業界に関心のある人(就職を検討する学生を含む)にとってもあまり役に立たないというか、全体的にどうなっているかを考える指標にはならないように思います。そこで、少し気になっていたので生命保険業界を21年3月末決算までの数年で見てみました。2020年からコロナ禍の時期に入り、期間的には1年3か月程度その影響を受けていると考えられます。
まず保有契約に関わる年換算保険料をみると、業界全体で19年3月末28兆6759億3700万円をピークに微減(20年3月末28兆2363億4700万)、21年3月末27兆9649億9600万円となっています。
次に業界のトップの市場シェアを見てみます。トップはかんぽ生命だと思っていましたが、これは2018年度(19年3月末)までの話で、19年度(20年3月末)、20年度(21年3月末)は日本生命に変わっています。上位1社のシェアも19年3月期13.31%となり、以降13.5%を下回る値まで低下してきました。
上位3社累積集中度(上位3社シェア合計)も18年3月末35.35%から21年3月末32.98%と低下しています。
各社の市場シェアを二乗し合計した値をHHI(ハーフィンダールハーシュマン指数)といい、これにより業界の競争状況を把握することがあります。ハーフィンダール指数は1に近いほど寡占が進んでおり、逆に0.1未満では市場が寡占的でないことを示すとされています。生命保険業界の保有契約に関わる年換算保険料をベースにこの指数を計算してみました。18年3月末0.06841から21年3月末0.0628へ低下しています。
これらを総合してみると、生命保険業界は全体として規模面では横ばいから微減、その中で競争環境の激しい方向へ進んでいるようです。
なお、ここで記載した数値は、生命保険協会事業概況(データCD-ROM)を使い筆者が計算したものです。以下にここで触れた数値をまとめた表を示します。
まとめ表
2018年3月末 | 2019年3月末 | 2020年3月末 | 2021年3月末 | |
上位1社シェア | 13.84% |
13.31% |
13.32% | 13.37% |
上位3社累積集中度 | 35.35% | 34.48% | 34.07% | 32.98% |
HHI(ハーフィンダールハーシュマン指数) | 0.06841 | 0.06599 | 0.0650 | 0.0628 |
生命保険業界保有契約年換算保険料 |
27兆8752億2000万円 |
28兆6759億3700万円 | 28兆2363億4700万円 | 27兆9649億9600万円 |