さて今回は日本です。24年新NISA開始と歩調をあわせるように日本株は上昇しています。短期的なハイスピードですが、歴史的にみて日本株の時価総額が長期的に上昇基調にあったわけではありません。これはニュース等でバブル崩壊後の日経平均株価の推移が取り上げられていたこともあるので存知の方が多いでしょう。
日本ではそもそも名目GDPが増大していないので、これと乖離して株式時価総額だけが増大することは、短期的にあっても長期的には普通ないようにも思います。そこで日本における名目GDPと株式時価総額の推移を確認しましょう。図表1にドルベースの日本の名目GDPと株式時価総額推移を示します(円ベースは次回)。
図表1ドイツ名目GDPと株式時価総額推移 (図表1およびこの後出てくる図表2とも名目GDPはIMF,株式時価総額は世銀から筆者集計により作成)
名目GDP(図表の青線)は1990年から95年まで上昇、その後下落から上下動を伴う横ばい状態が2009年ころまで続きます。続いて12年まで上昇しますが、翌年から15年まで下落基調となった後、再び横ばい状態に入り、22年に下落します。図の青線全体をみても右肩上がりにはどう見てもなっていません。これはこれまで見た米国、中国、ドイツとは明らかに相違しています。
1990年から10年単位で年平均成長率をみると名目GDPは
90~00年 4.09% 00~10年 1.99% 10~20年 0% となっています。
10年単位でみると、年平均成長率は低下傾向になっているように見えます。これは10年単位なので、2010年から20年までを3分割くらいにわけると、かなり違う時期もあります。しかし名目GDPを長期で見ると、マイルドなデフレによる低成長あるいは下落基調が織り込まれた横ばいのような状態です。もちろん今回はドルベースなので為替の影響を受けていることも考慮が必要です。
次に株式時価総額(図表茶色線)ですが、1990年~2011年ころまで大きな上下動を伴いながらほぼ横ばい状態です。その間、株式時価総額は名目GDPを下回る位置で推移していました。その後2012年から株式時価総額は上昇基調となり、15年から名目GDPを上回る位置で推移し上昇しています。
株式時価総額について10年単位で同様に年平均成長率をみると、
90~00年0.69% 00~10年-0.01% 10~20年6.7%
となっています。
名目GDPと株式時価総額の関係
日本の場合(図表1を見ると)、名目GDPと株式時価総額の動きは、名目GDPが横ばいにある中で株式時価総額が同様に横ばいとなっている時期と、株式時価総額だけが増大する時期とに区分されるように見えます。両者が成長しているという状況にはありません。両者の乖離の状況を下表に示します。
図表2 株式時価総額/名目GDP
単位:百万ドル |
1990 |
1995 |
2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
2021 |
2022 |
名目GDP |
3兆1965億56百万ドル |
5兆5455億66百万ドル |
4兆9683億60百万ドル |
4兆8314億67百万ドル |
5兆7590億72百万ドル |
4兆4449億31百万ドル |
5兆0506億83百万ドル |
5兆0118億69百万ドル |
4兆2375億28百万ドル |
株式時価総額 |
2兆9285億34百万ドル |
3兆5453億06百万ドル |
3兆1572億22百万ドル |
4兆5729億01百万ドル |
3兆8277億74百万ドル |
4兆8949億19百万ドル |
6兆7182億19百万ドル |
6兆5443億03百万ドル |
5兆 3804億75百万ドル |
株式時価総額/名目GDP |
0.92 |
0.64 |
0.64 |
0.95 |
0.66 |
1.10 |
1.33 |
1.31 |
1.27 |
日本では2014年まで「名目GDP>株式時価総額」、2015年から逆転して「名目GDP<株式時価総額」という関係に変化しています。特に2015年からは名目GDPは成長が続いていないのに株式時価総額だけが増大しているようにも見えます。
名目GDPと株式時価総額の比率(株式時価総額/名目GDP)は90年0.92でした。その後下落して2000年0.64となります。2000年段階では株式時価総額は名目GDPの64%程度の規模でした。その後上下しながら2015年に1.1と名目GDPを上回り、2020年に1.33となっています。2020年には株式時価総額は名目GDPの133%程度の規模にまで増大しています。22年段階でも127%です。
さて今回は日本をドルベースでみてみました。次回は円ベースで日本の状況を整理します。
(小山 浩一)