情報・コラム

株式時価総額推移に関するここまでの国際比較

今回は当初、フランスを取り上げる予定でした。しかしフランスについては2019年から株式時価総額のデータをうまく取れませんでした。理由はユーロネクスト(金融グループ)が、複数の国(フランスを含む)の証券取引所を買収等によって統合したため、国別でのデータを(現時点で)入手できなかったことによります。これはたぶん、私の知識不足によるもので、データのとり方を少し勉強していずれ対応しようと思います。                                              ということで今回は、ここまで取り上げた諸国についての比較を行い、‘目のつけどころ’を明確にしていこうと思います。

 名目GDPと株式時価総額の関係

 これまで米国、中国、ドイツ、日本、インド、イギリスについて見てきました。                                            (当HPのコラム「資産形成の話②米国」~「資産形成の話⑩イギリス」)

この6か国を見ると、二つに区分できます。すなわち

・名目GDPを上回る位置で株式時価総額が推移する市場

・名目GDPを下回る位置で株式時価総額が推移する市場

そこでこの区分を見てみましょう。

「株式時価総額/名目GDP」の平均値※比較(※「株式時価総額/名目GDP」の各年の値の算術平均の値)

 

20102022の平均値

 

20102022の平均値

米国

 1.49

 インド

 0.80

イギリス

 1.28

 中国

 0.61

日本(ドルベース)

 1.00

 ドイツ

 0.49

日本(円ベース)

 1.02

 

 

株式時価総額が名目GDPを上回る位置で推移しているのは、米国、イギリス、日本です。

このうち名目GDPがほぼ横ばいの日本と、名目GDPがほぼ右肩上がりの米国やイギリスとは区分しておくべきかもしれません。

いずれにしろこの3か国については株式時価総額が名目GDPの実額を超える値で推移しています。

これに対してインド、中国、ドイツの株式時価総額は名目GDPを下回る位置で推移しています。

言い換えると株式時価総額の実額は名目GDPを超えていません。

株式時価総額の平均成長率は

 上記の2区分を考慮しつつ、国別の株式時価総額の年平均成長率を見ると下表の通りとなっています。

株式時価総額年平均成長率※(201022年)(ドルベース)(※各年の株式時価総額の前年成長率の幾何平均の値)

20102022年の年平均成長率

20102022年の年平均成長率

米国  7.86% インド  8.14%
イギリス  0.79% 中国  9.35%
日本(ドルベース)  3.82% ドイツ  2.97%
日本(円ベース)  6.59%

 

  名目GDPを超える値となっている株式時価総額が、その水準でさらに毎年成長することは、考えると大変なことのようにも思います。

例えば100点満点のテストで(難易度及びテスト勉強の努力は一定として)、最近の数回で60点台の人と90点台の人の次のテストでの点数の伸びを考えると、すでに90点台の人のほうが伸びるのが大変です。

 ところがそうでもない国も存在します。米国がその代表でしょう。

米国はすでに名目GDPは大きく(202225兆4627億ドル)、その段階で株式時価総額の平均成長率は7.86%と高い伸びを示しています。

これに対して同時期の株式時価総額の年平均成長率はイギリス0.79%、日本(ドルベース)3.82%となっています。

※日本の22年名目GDP(ドルベース)は、42735億ドルです。 

 株式時価総額が名目GDPを下回る位置で推移するインドは22年の名目GDP33896億ドルで、株式時価総額の年平均成長率は8.14%となっています。

名目GDPはいわば生産性の上昇とインフレとが合わさった数値です。株式時価総額も同様で、企業の生産性の上昇とインフレと合わさって株価が構成されていると考えられます。 その点から考えると、名目GDPが伸びることと株式時価総額が伸びることは表裏のような関係と思われます。

日本のように名目GDPが横ばいで株式時価総額だけが伸びるというのは、世界的には珍しい感じがします。

世界株式インデックスか米国株式インデックスかという問題

最近、米国株か、世界株式かという議論が、NISAの問題から話題に上っています。今のところ、世界株式インデックスが積み立て投資の1位になっており、次いで米国株のインデックスが積み立て投資2位となっているようです。米国株の伸びが大きいので、日本やイギリスなどを含めるより、米国に絞ったほうが伸びは大きいかもしれません。しかし、米国は名目GDPとの乖離が大きいので、下落余地があるとも考えられます。個人的にはそのリスクを考えると、世界株のほうがいいかなーとも思います。一方、積み立て投資の場合、気分は別として、一時的に下落してくれたほうが将来の資産の増大につながるので、どっちもどっちということでしょうか。

 さて次回は、世界株式インデックスの指標であるMSCIオールカントリーがどの程度世界の株式時価総額の推移と連動しているかを見てみましょう。

(小山 浩一)