情報・コラム

全世界株式インデックスの話

今年スタートした新NISAの関係から、全世界株式インデックスファンドへの投資が増大しているようです。この全世界株式インデックスファンドはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動することを想定した投資信託やETFが主流で、多数存在します。中でも特に有名なのが「eMaxis slim全世界株式(オールカントリー)」でしょう。そこで今回は、MSCIオールカントリー・ワールド・インデックスの対象国である先進国23か国、新興国24か国、計47か国の合計値で名目GDP,株式時価総額とMSCIACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)指数の推移とその連動性をドルベースで視覚的に確認してみます。

図表1オールカントリー対象国名目GDP・株式時価総額とMSCIオールカントリーワールドインデックス推移                     (MSCI指数(右軸)はinvesting.comから(2004年以降)、名目GDP(左軸)はIMF、株式時価総額(左軸)は世銀から対象国合計を筆者が集計し作成)

折れ線グラフをみると青色線の株式時価総額と、グレー線のMSCIオールカントリー指数の線の形状がほぼ同じであることがわかります。

グレーのMSCIオールカントリー指数の線は、右軸目盛です。図表1は右軸を意図的に下方にずらし、青色線(株式時価総額)とグレー線を位置的に一致しないようにしています。これにより視覚的に線の形状を比較して把握できると思います。その結果、ほぼ同様の動きを示していることがわかります。

 もともとグレー線があらわすMSCIオールカントリー指数は、対象47か国の株式全体の85%程度をカバーしており、そのため株式時価総額とほぼ同じ動きになっています。したがって株式時価総額が長期的に増大を続けるとすれば(歴史的にはそうなってきた)、それをほぼトレースする形のMSCIオールカントリー指数も同様に増大します。したがってこの指数と連動する投資信託やETFを買っておけば、同様にその程度の資産増大を確保できることになります。これは市場平均で資産を増大させる手法と言い換えることができます。市場平均ですから、市場全体がネガティブな動きをする場合には、当然一緒に資産価格が下落します。これはリーマンショックや新型コロナウイルス禍の当初、さらにウクライナ問題などの初期の時期を見るとわかります。しかし、それらを経ても結局、株式時価総額は長期トレンドとしては右肩上がりに増大しています。したがって長期の資産形成としてみるとこのインデックスの利用は合理的と考えられます。

 実際に日本で購入されているこの系統の投資信託(代表が「eMaxis slim全世界株式(オールカントリー)」)は円建てです。一方、図表1はドルベースです。したがってドルベースの資産価格推移に対して為替レートが影響を与えて、円建て資産の動きに反映します。最近では円安方向なので、ドルベースの資産の増大より、大きな資産価格の増大として表れていると思われます。逆にいうと、今後円高に触れれば、ドルベースの価格の増大より小さな資産価格の増大となって現れることになります。

だったら、円高になってから購入したほうが良いと思うかもしれません。しかし長期で考えると、本体価格であるドルベースの資産価格が増大(右肩あがり)するのであれば、円安の時期に買わずに待っていても、その間に資産価格自体が上がってしまい、結局高い時期に購入することになりかねません。したがって円で投資信託を購入している人は、為替レートの動きを気にせず積立投資で購入しておけばよいはずです。

市場平均を超えて資産を増大させるためには裁量的に売り買いを自ら行う必要があります。この方式で頑張りたい人はそれでもいいと思います。しかし、個々の株式や個別資産の価格の動きを予測するには相当の作業負荷が必要です。このため私自身は、そのような作業負荷にかける時間が「もったいない」ので(私の場合「もったいない」というだけであり、それぞれで「もったいない」かどうかは異なります)、市場平均で資産を増大させることでよいと割り切っています。皆さんはどうでしょうか?

(小山 浩一)