リスク教育研究会. ※リスク教育研究会の当ぺージは、
委託に基づき (株) 資産とリスク研究所
が管理・運営しております。

リスク教育研究会のコラムの追加等を
メール配信サービスにてお知らせします。

ご希望の方はこちらからメールアドレス登録

リスクの予測と選択的手段の想像力に関するセンスの醸成

 リスクに関する想像力や評価の感覚は、すべての事物について要求される基礎事項であろう。また、判断のタイミングは、状況の変化に合わせて無数に出現する。

 想像力や評価の能力は、知見の多寡に大きく影響を受けており、それは個々人の人生経験にまで依拠する。したがって、リスクに係る感覚を他者と共有し、内面的なセンスにまで昇華させていく作業は、とても難しい。

 消防業務で扱う各種事案の状況は、既にリスクの想定段階を過ぎて発現してしまった状態からの対応になる。その時点において対応していくリスクの大きさや複雑性は、初期段階より拡大しており、また情報が不明確といった条件の中で評価と判断をしていかなければならないため、ひとえに個々人の想像力がものを言う。

 消防では10年ほど前から職員の大量退職のフェーズに入っており、今後も団塊ジュニア世代の退職期を迎えていく状況もあることから、若年世代への知識と技術の伝承が全国的に唱えられている。しかしながら、経験値に大きく左右されるリスク評価や対応手段の想像力を教育する効果的な手段は、確立されていないのが実情だ。

 例えば、交通事故現場に到着してから使用する発煙筒の自動着火キャップを出場途上の車内で開けてしまい、車内で呆然と立ち尽くす。資機材の扱い方によっての必然的な帰結が想像できないため、ケガをしてしまう。道具を使わずに対処できるものであっても、すべて日常生活通りの手段しか想像できない。非常現場において解決側の立場としての行動が求められているにもかかわらず、なお通常生活の行動様式の感覚から切り替わらない。規格化された状況でなければ、対処法や取り扱い手段が分からない。など。

 これらを伝えていくには、リスクに係る想像力とセンスの性状の部分から考えていくことがポイントなのかもしれない。              

                                        (橋本正則)