新しいNISAのスタートまで3か月になりました。この関係で投資関連の情報が相当多くなっているように感じます。またNISAでの購入が可能な投資信託の選定関連の情報もかなり増えています。
そこで今回は、投資初心者(ちなみに私は初心者状態が20年以上続いていますが)にとっての「市場平均で資産形成する」、つまり短い期間で金融商品を売買せずに、長期間にわたって資産形成るする場合の目安を確認しておきたいと思います。言い換えると「市場平均とは何か」ということでもあります。
「市場」ということでみると、まず株式時価総額の推移がわかりやすいでしょう。各国の株式市場におけるすべての株式の時価の総量です。株価は個別でみると、ある時期に上がる株も下がる株もあります。これらをすべて(上がった株も下がった株も、ある時点で)「株価×株数」計算し、足し合わせたものです。各国の株式時価総額をすべて足し合わせたものが「全世界の株式時価総額」ということになります。
さて、当たり前ですが株価は株式の価格です。つまり株価は名目ということです。したがって株式時価総額と経済的な成長を表すGDPを対比的に参考にするには名目GDPを見る必要があると考えられます。
「全世界名目GDP」と「全世界株式時価総額」の過去31年(1,990年~2020年)の推移を図表1に示します。
図表1 全世界名目GDPと全世界株式時価総額推移(ドルベース)
※図表1のグラフは、名目GDPをIMFデータ、株式時価総額を世銀データから集計し筆者作成。(単位:百万ドル)
折れ線グラフの通り、大きな流れで見ると双方とも右肩上がりで上昇しています。
これを10年単位でみると
名目GDP | 全世界株式時価総額 | |
1990年 | 22兆6,124億 3百万ドル | 9兆5,191億 7百万ドル |
2000年 | 34兆 568億49百万ドル | 30兆9,254億34百万ドル |
2010年 | 66兆4,879億51百万ドル | 54兆2,595億18百万ドル |
2020年 | 84兆8,949億23百万ドル | 93兆6,862億26百万ドル |
2020年/1990年(倍率) | 3.75 倍 | 9.84 倍 |
1990年から2020年までの31年間で名目GDPは3.75倍、全世界株式時価総額は9.84倍に増大しました。
年率で換算すると、名目GDPは4.36%、全世界株式時価総額は7.65%の成長率です。
この間、もし全世界株式時価総額に連動する投資信託やETFに投資していればその程度の利回りで運用できた計算です。
さて、そこで問題は「市場平均」とは何かということです。
株式時価総額の動きそのものを市場平均と考えれば年率7.65%程度の成長を確保できる、その程度がこれまでの長期における市場平均としての投資成果と考えることができます。
しかしもともと長期では経済成長分が株価に反映すると考えると、市場平均は名目GDPなのではないかとも考えられます。名目GDPは年率4.36%成長でした。
実際グラフを見ると、大半において名目GDP(の線)を下回る位置で世界株式時価総額(の線)が動いています。ところが2019年から2020年にかけて株式時価総額の線が、名目GDPの線を上回る位置に入れ替わっています。
名目GDPからの乖離をリスクと考えると、2019年~2020年にかけては上振れ方向でリスクが顕在化したことになります。
一方、あくまで株式時価総額の推移字体が市場平均の表れだとすると、年平均7.65%の推移を直線で表し、そこでの上下動をリスクと考えることもできます。
一体どちらか、あるいは両方の視点を考慮して判断するしかないのか、なかなか悩ましい感じがします。そこで名目GDPと株式時価総額の推移を国別にみて検討しようと思います。ということで次回は、国別にみてみることにします。