リスク教育研究会のコラムの追加等を
メール配信サービスにてお知らせします。
リスクリテラシーを身につけるためのリスク教育の指導者向けのテキストとしてリスク教育アクティビティ集をつくりました。リスクリテラシーとは、リスクの判断や行動選択などをするときに必要な基礎知識や思考能力のことで、科学的な事実を理解したり、多面的な思考を促したりするものです。普段、リスクを科学的に考えることはないと思いますが、リスクを感覚で捉えたために誤った判断をして意味のない行動や無用な心配をしたり、逆に対処すべき危ないことを見逃したりする場合があります。多くの人がリスクリテラシーを身につけると、自分自身のリスクを小さくできるだけでなく、社会全体でも合理的な行動や施策が行われて、費用の節減やより多くの人の安全安心につながると考えられます。
リスクリテラシーには、知識だけでなく感覚や価値観の多様性の理解も含まれます。知識は講話や読書などでも得られますが、感覚的なものは一方向的な受け身の学習で修得することは難しいので、参加型の学修スタイル(アクティブラーニング)でリスクを学ぶプログラムとしました。教える/覚えるのではなく、活動(アクティビティ)を通して参加者が意味に気づき、自発的な学びにつなげる手法です。グループワークなどでは、参加者の多様な価値観を知ることができます。
このアクティビティ集には14のアクティビティが収録されています。人を集めてワークショップを行う場合やブースを設けて来訪者に都度講習を行うような場合にも利用できます。例を一つ紹介します。「白か黒か」は、リスクを連続的な確率の概念として理解するためのアクティビティです。参加者に白や黒や様々な濃度の灰色を提示して白か黒かを尋ねたあと、白から黒に変化するグラデーションを示して白と黒の境界を指してもらいます。このアクティビティを進めていくと、白と黒を分けることの曖昧さは、リスクがある・ないを分けることと同じであり、境界の意味から基準値の意味に気づいたり、自分と他人の違いから多様な価値観を理解したりします。
学びは自分が教える側に立つと本物になります。本書の使い方を講習会で学んで皆さんにリスク教育の講師になっていただくことで、リスクの考え方がしっかり社会に広まっていくと考えています(本書は講習会で配布します)。是非ご一緒にリスクの考え方を理解して社会に広めませんか。
(金澤 伸浩)
ご関心のある方は、お問い合わせください。